シリコンコーティングクロス
 APCOパラグライダーはキャノピー生地としてシリコンコーティングクロスと呼ぶ、両面2重コーティング・ナイロンクロスを採用しています。 これはナイロンクロスの両面にポリウレタンコーティングを施した上に、さらにシリコンゴムをコーティングしたものです。 ポリウレタンコーティング層は空気の透過を止め、シリコンゴムコーティング層は下層のコーティングおよび生地そのものを保護する働きをします。 そのためシリコンコーティングクロスはナイロン生地そのもの、および空気漏れを止めるポリウレタンコーティングが非常に長持ちするのです。 多くのパラグライダーに使用されているナイロンクロスは、生地の片面または両面にポリウレタンのコーティングを施しただけのものです。 これに対してAPCO社が採用しているクロスは、独特の「しなやかさ」により破れ難く、耐通気性・耐摩耗性・防汚性に優れ、長期間にわたり安定した性能を保ちます。シリコンコーティングクロスの破れ修理については、こちらをご覧ください。

サスペンションライン(ライン)
 APCO社製パラグライダーのラインはそれぞれの部位に最適な素材を採用しています。APCOグライダー独特の、キャノピー直縫いトップラインには被覆の無いダイニーマライン、ミドル/ボトムのラインにはアラミド(ケブラー)ライン、ブレークコードには被覆付きのダイニーマおよびポリエステルラインをそれぞれ使用しています。一般にサスペンションラインはキャノピー素材よりも寿命が短いので、点検・修理・交換(ラインメンテナンス)が必要です。

アラミドライン
 アラミド繊維はケブラーと呼ばれることがあります。「ケブラー」という名称はデュポン社の商標です。アラミド繊維は伸び・縮みが少なく、非常に高い引っ張り強度がある反面、紫外線による劣化が早いという欠点もあります。細くても高い強度を持ち、長さの安定も良いという点を評価され、パラグライダー用のラインとして多く用いられています。紫外線劣化をくい止めるため、被覆を被せたラインが一般に使用されています。しかし紫外線劣化を完全に防ぐことは出来ないので、定期的な交換が必要です。

ダイニーマライン
 改良により強度を増したポリエチレン繊維です。アラミド繊維よりも紫外線に強く、キャノピー素材のナイロンやポリエステルと概ね同程度の紫外線耐久性があります。折り曲げや摩擦のような物理的なストレスにもアラミド繊維よりも強い反面、伸び・縮みが若干多く、長さの安定において劣ります。引っ張り強度は同じ太さのアラミド繊維と概ね同じです。APCO社は一部の機種のトップラインに、被覆の無いダイニーマラインを採用しています。またブレークコードのラインに、被覆のあるダイニーマラインを採用しています。

ポリエステルライン
 APCO社はブレークコードのボトムライン(ハンドルが取り付けられているライン)にポリエステル素材を採用しています。このラインは引っ張り強度は同じ太さのアラミド繊維やダイニーマに劣りますが、長期間安定した強度を保ち、摩擦・折り曲げに強くブレークボトムラインには最適です。引っ張り強度についても必要にして十分な強度があります。

ラインメンテナンス
 サスペンションラインのメンテナンスで、その最も大きな問題点は、「外見からは劣化度合いを判定することが難しい」ということです。これは被覆を被せたラインが多いことが主な理由ですが、被覆の無いコンペティションラインにおいても外見から強度を判定することは難しことです。そのためAPCO社では、1年または100飛行時間毎にボトムライン(モデルによってはAおよびBボトムライン)交換を勧めています。その他のラインは強度試験や外皮の摩耗状態などを参考にして、必要に応じて交換することとしています。また外皮を被せたラインは徐々に縮むので、定期的にストレッチが必要です。ユーザーの方は、取扱説明書を参照してください。

ラインストレッチ
 サスペンションラインは縮みます。その原因は被覆を被せていることにあります。内部の繊維がストレートラインであれば、その繊維自体の伸び・縮みはごくわずかで問題にはなりません。しかし外皮は織物なので、衣類が洗濯の後縮むのと同じような現象が起こります。これがラインの縮みの原因です。従って内部繊維の素材には関係なく起こります。また縮みの程度はライン1本毎に異なります。
 縮んだラインは引っ張って伸ばすことにより、ある程度回復させることが出来ます。ライザー先端(ハーネスと連結する部分)を頑丈なものに固定し、キャノピー付け根近くのラインを持って約10Kg程度の荷重をかけます。このときキャノピー生地は絶対に持たないでください。生地または縫い目に重大な損傷を及ぼす可能性があります。ストレッチを行っても回復しない場合、または一旦回復してもまたすぐに縮むときは、ライン交換を行ってください。

サスペンションライン強度試験
 (株)ラ・ムエッティはサスペンションライン強度試験機を独自で開発・設置して、パラグライダーの安全管理およびメンテナンスサービスに役立ています。この強度試験はラインが破壊するまで引っ張り、試験対象のラインが保有していた強度を記録するものです。従って試験を実施したラインは再使用できません。パラグライダーのメンテナンスの一環として実施する場合は、ラインを一本取り外し強度試験を行います。試験結果が良好であった場合は試験対象となったラインのみを新品と交換します。もし結果が悪かった場合は、試験対象のラインが含まれるライングループ、または全ラインを交換してください。
 ライン強度試験の結果はあくまで対象となったラインの強度を表しているだけで、他のラインの強度を正確に知ることは出来ません。しかし同じパラグライダーのラインとして使われているものですから、強度を推測する手がかりになります。
 APCO社製パラグライダーのライン強度試験をお申し込みいただいた場合は、交換用新品ライン代金は試験料金に含まれます。他社製品のライン強度試験も歓迎いたします。但し他社製品の場合、試験結果に対する判定および交換用ラインは提供できません。
 ライン強度試験をご依頼いただく場合は、対象となるラインの取り外し・取り付けは、ご自身で行ってください。これらの作業を弊社で行う場合は、強度試験費用とは別に作業工賃を申し受けます。
 詳しくはお問い合わせください。

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